ヤフーオークションに、日蓮の大曼荼羅本尊が、1億円の価格で出品された事件の絡みで、当該の曼荼羅が「昔、週刊誌に載っていた、京都の日蓮宗寺院から盗難に遭った曼荼羅ではないか」

との説が出たので、平成7年に起こった「日蓮真筆大漫荼羅本尊盗難事件」を検証してみたい。

まず時系列に並べると、概ね以下のようになる。

 

1995(平成7)

428  神奈川県鎌倉市妙本寺,宝蔵庫に不法侵入されるが盗難未遂に終わる(仏教タイムス)

5 7  千葉県茂原市法華宗本門流鷲山寺,不法侵入されるが盗難未遂に終わる

512  日蓮宗宗務院,一連の宗宝盗難事件に対し真蹟類格護に万全を期すよう宗門関係寺院に注意を喚起する〈6・16〉(仏教タイムス)

529  京都市本門法華宗妙蓮寺,日蓮聖人真蹟曼荼羅本尊他寺宝6点が盗難に遇う

7 2  京都市日蓮本宗要法寺,宝物の一部が盗難に遇う(仏教タイムス)

1027  京都市本圀寺,日蓮聖人真蹟曼荼羅など宗宝・寺宝の盗難被害届けをする(だいぶ後になって盗難が発覚したもの)

本尊041

 

これらの事件は未遂も含めてのものですが、

1995(平成7)529日  京都市本門法華宗妙蓮寺での盗難事件

1995(平成7)1027日  東の身延山に対し「西の総本山」と呼ばれている日蓮宗の大本山・本圀寺での盗難事件

この二つは、実際に日蓮直筆の大漫荼羅本尊が盗まれている。

この当時は、日蓮正宗と創価学会の「宗創戦争」が最も派手に繰り広げられていた時代でしたので、この宗創戦争との関連が盛んに囁かれていた。

 

1991(平成3)1128日 日蓮正宗が創価学会を破門

1992年(平成4年)

7月 創価学会が全国の地区幹部の中から「友人葬」などの冠婚葬祭を執り行う導師を任命。

811日 池田大作が日蓮正宗から信徒除名処分にされる。

1993年(平成5年)

10月 栃木県・淨圓寺所蔵の日寛書写(享保五年)の曼荼羅本尊を新形木御本尊として、世界の創価学会員に授与することを制定。

 

こういった流れの中で、創価学会員全員の日蓮正宗信徒の資格喪失も時間の問題と言われていた最中のこと。実際、1997年(平成9年)121日 日蓮正宗が「宗規」を一部改正して、創価学会員の日蓮正宗の信徒資格を全て喪失せしめることを決定している。

1995(平成7)年といえば、まさに創価学会の独立教団化がまさに現実味を帯びだしていたころ。しかし創価学会は、新しい日蓮教団として独立するには、大きな難点がある。そのひとつが、日蓮直筆の大漫荼羅本尊をひとつとして格蔵していないことだ。

日蓮直筆の大漫荼羅本尊だけではない。創価学会は、日蓮直筆の遺文(御書)もひとつも格蔵していないし、日蓮が使った遺品もひとつもない。日蓮の遺骨もないし、日蓮の何の霊跡でもない。

これでは、いくら「日蓮直結」「御書直結」を叫んだところで、世間が創価学会を新しい日蓮教団として認知しないのである。日蓮宗各本山・教団は、「日蓮直筆」「日蓮遺骨」「日蓮霊跡」を宗教的権威の拠り所にしているのであり、それによって世間からも信者からも権威が認知されているのである。

身延山久遠寺→日蓮真骨・日蓮正墓(日蓮廟)・日蓮草庵霊跡・立正の勅額

日蓮・祖廟1


中山法華経寺→立正安国論・観心本尊抄や撰時抄などの多数の日蓮直筆遺文

池上本門寺→日蓮入滅霊跡・正応元年造立の日蓮祖師像(国の重要文化財)・日蓮歯骨

御会式22大堂


保田妙本寺→日蓮直筆・万年救護本尊

龍口寺→日蓮・龍口法難霊跡

清澄寺→日蓮・立宗宣言霊跡

誕生寺→日蓮生誕霊跡(但し本当の生誕の地は海中に没している)

鎌倉妙本寺→日蓮直筆・臨滅度時本尊

 

こういったことから、「創価学会が『日蓮直筆本尊』を求めているのではないか」という噂が世間に流布しており、その最中の盗難事件であった。

犯人は、日蓮宗本山寺院から、日蓮直筆本尊を盗み出して、創価学会に高く売りつけようとしていたのではないかと言われていて、これらの日蓮直筆本尊は、時価数百億円と一部マスコミでは書かれていた。

創価学会は、この盗難にあった日蓮直筆本尊の入手を否定しているが、仮にこんな盗品を入手して会館に祀っても、宗教的権威がつくどころか、盗品等譲受罪、盗品等有償処分あっせん罪等々の疑いで司法当局から刑事責任が追及され、創価学会の信用は地に落ちるほど失墜するだろう。よってこの盗難事件と宗創戦争との関連は、単なる推測の域を出ていないと考えられる。