■小湊誕生寺1(観心本尊抄・撰時抄等のレプリカ)

 

「小湊誕生寺」とは、千葉県鴨川市天津小湊にある日蓮の生誕を記念して建てられた寺で、1276(建治2)10月、日蓮の弟子・日家が日蓮の生家跡に高光山日蓮誕生寺として建立されたというが、この説は今は疑わしいとされている。

誕生寺の開祖・日家も、富士妙蓮寺の開祖・寂日坊日華と同一人だの、そうでないだのという論争がつづいており、未だに結論が出ていない。日蓮宗が発刊する「日蓮宗本山めぐり」の中の記述は、誕生寺の開祖・日家を誕生寺二世としており、富士妙蓮寺の開祖・寂日坊日華とは別人説に立っているように思われる。

 

1498(明応7)年と1703(元禄16)年の二度の大地震による大津波にあい、現在の地で水戸光圀の外護で「誕生寺」が再建されたが、1758(宝暦8)年に火災で焼失。1842(天保13)年に再建された。

誕生寺の境内には、仁王門、本堂、客殿、日蓮像が祀られている祖師堂、宝物殿などが建ち並んでいる。

境内中央にそびえ立っている大きな堂宇は祖師堂。この祖師堂の裏側に本師殿宝塔がある。

本堂、客殿、寺務所、布教殿堂は歩道橋を渡って奥にある。参道には売店が建ち並んでいて、普段から参詣人が多いことを伺わせている。

祖師堂はケヤキの大柱52本を使った国内有数の大堂で、日蓮像が安置される御宮殿は明治皇室大奥の寄進によるものであるという。

祖師堂内の右側の天井には南部藩の相馬大作筆による天女の絵が描かれる。堂内の天蓋等の仏具類は明治天皇の生母である中山慶子一位局や、大正天皇の生母・柳原愛子一位局による寄進によるものだという。

 

私がこの中で注目したのは、宝物殿である。

ここには、日蓮真筆の大漫荼羅本尊、日蓮真筆遺文「富木殿女房ご返事」、日蓮真筆の「観心本尊抄」「撰時抄」「立正安国論」のレプリカなどがズラリと展示されている。

日蓮真筆のレプリカではあるが、「観心本尊抄」「撰時抄」「立正安国論」は見ものである。

寺院の虫払いとか風入れの法要に行っても、見ることはできるかもしれないが、ゆっくりと間近で見ることはできない。

千葉県鴨川市天津小湊にある日蓮宗の古刹寺院・誕生寺・宝物館の展示は、数ある日蓮関係の寺院の宝物館における展示や「霊宝虫払い法要」における拝観などの中では、実にゆっくり展示を拝観できたし、内容的にもとても充実していたものだと思う。

この誕生寺宝物館の常設展示は9室に分けられていて、ここには国宝や重要文化財などがズラリと並んでいる。

小湊誕生寺4


それらの詳細は

 

1室 祖師堂日蓮像胎内納入文書

2室 日蓮真筆「兄弟抄」「筆蹟断簡」「本尊」「冨木殿女房御返事」「立正安国論」「観心本尊抄」

「貞観政要」「日蓮肖像画」

3室 日蓮真筆「可延定業御書」「遺文断簡」「本尊」、釈迦牟尼立像、蘇生祈願の日蓮像、日蓮幼像、

4室 日蓮真筆「撰時抄」「御消息」「断簡」、誕生寺歴代住職の本尊

5室 誕生寺の古図、徳川お万の方の実父の写経、など

6室 加藤清正の遺品、誕生寺18世住職日延の棟札、水戸光圀の書状、朱印状など

7室 平家納経、奈良法隆寺壁画写真、天台大師肖像画、伝教大師肖像画など

8室 小湊、内浦の古図、祖師堂天井墨絵の作者・林斉筆の山水画など

9室 明治天皇皇室の寄贈品の数々

 

こんな感じで、所狭しと目を引く展示が並べられている。

私がそれらの中でも、特に目を引いたのは、日蓮真筆の本尊や遺文「兄弟抄」「冨木殿女房御返事」「立正安国論」「観心本尊抄」「可延定業御書」「撰時抄」などの数々である。

誕生寺の説明によると、「兄弟抄」「立正安国論」には(複製)と書いてあるので、これは真筆そのものではなく、真筆のレプリカということだが、他の遺文には、複製とも何とも書かれていない。

ただ「観心本尊抄」「可延定業御書」の真筆は、ここではなく中山法華経寺に、「撰時抄」の真筆は静岡県の玉沢・妙法華寺に、格蔵されているはずなので、ここに展示されているのは、真筆そのものではなく、レプリカのはず…。ただ、レプリカであっても、真筆を拝観しているのと変わらないので、拝観する価値は大いにあると思う。

 

さらに宝物殿では、誕生寺歴代貫首の墨蹟、里見家、加藤清正、水戸光圀等の遺墨、明治天皇・皇室よりの拝領品、日蓮一代伝記画十八枚などが展示されている。

 

なお正月になると、誕生寺から海岸線にかけて、初日の出を見ようと、たくさんの人たちがこの付近に集まってくる。

ただ、初日の出を見るのであれば、誕生寺周辺の海岸よりも、山のてっぺんにある高台の清澄寺のほうがいいと言われている。