■小湊誕生寺2(真鯛の群泳と日蓮)

 

誕生寺は日蓮誕生の霊跡としてあまりにも有名で、日蓮宗七大本山のひとつになっている。

寺伝によれば、日蓮誕生の時、海辺には蓮華が咲き、鯛が群れ、館の庭に清泉がわき出たという。これが今の蓮華ヶ淵、妙の浦、誕生水井戸であるという。

つまり日蓮が産まれた時、庭から清水が湧きだした、海には鯛が群れ集まった、海岸には蓮の花が咲き乱れたという三奇瑞が起こったという伝説があり、鯛ノ浦の真鯛は、長い間、禁漁が守られ、手厚く地元の人たちによって保護されてきたのだという。

建治二年(1276)10月、中老僧・日家と日保が、日蓮父母の館跡地に一宇を建立し、日蓮自ら高光山日蓮誕生寺と命名した。

当時の誕生寺は、今の鯛ノ浦にあったが、明応七年(1498)8月の地震・津波で押し流され、再建堂宇も元禄十六年(1703)11月の大地震による津波で流失。日蓮の生家があったところは、大地震による津波で海中に没してしまっているということになる。

 

鯛ノ浦は、千葉県鴨川市内浦湾から入道ヶ崎にかけての沿岸部の海域で、ここに真鯛(マダイ)が群泳することて゛広く知られている。

ここの真鯛は、特別天然記念物に指定されていて、域内では釣り等が禁止されている。

本来、真鯛は水深1020mを回遊する魚であるらしいのだが、鯛ノ浦のような水深の浅い海域に根つきになることはまず有りえないという。

古来からここの真鯛は名物とされていて、手漕ぎの舟でタイ見物をさせていたが、今は鯛ノ浦遊覧船により、鯛ノ浦周辺海域を廻り、エサづけされた真鯛を見ることができる。

 

この鯛ノ浦の遊覧船はもともと、市議会議員によって運営されてきたのだったが、1954(昭和29)年、小湊鯛ノ浦遊覧船企業組合が設立され、ここが遊覧船を運営している。

遊覧船に乗ると鯛ノ浦会館を出て、鯛の群泳鑑賞と弁天島周辺の遊覧を案内してくれる。鯛ノ浦の浅瀬に、真鯛が群泳しているというのは、本当のようである。

真鯛も、日蓮の化身として信仰され、弁天島は海中に没してしまった日蓮の生家に近いせいか、弁天が祀られ、ここへも年中、参拝者が絶えないのだという。

鯛の浦1
 

ところで面白いのは、ここの地域に伝わっている三奇瑞の内容は、明らかに日蓮正宗大石寺の「産湯相承書」の内容と大きく矛盾している。「産湯相承書」のほうは、後世の偽作であることが明らかであるが、だからといって、こちらの伝説のほうも真実を伝えているとは思えない。

又、鯛ノ浦の浅瀬の真鯛の群泳を日蓮と結びつけているが、ここの真鯛の群泳がいつごろからのものなのか、年代がはっきりしていないため、日蓮と関連づける科学的証拠にはならないと思う。

 

地元の人たちや日蓮の信者にとって、日蓮と関連づけたいという心情はわからないでもないが、ここの真鯛の群泳について、いつごろからのものなのかといったような科学的調査が必要なのではないだろうか。

 

もうひとつ面白いのは、誕生寺の寺伝と大きく内容が矛盾している偽書「産湯相承書」を日蓮の相伝書と重宝がっている日蓮正宗が、「鯛の伝説」等、誕生寺の寺伝に出てくる日蓮誕生伝説が、あたかも日蓮正宗を正統化する伝説であるかのように、「日蓮大聖人正伝」という本に記述していること。「日蓮大聖人正伝」とは、大石寺が1981年の日蓮七百遠忌を記念して出版した本である。

自らが邪宗と非難する日蓮宗の寺伝だろうが何だろうが、自己正当化のためには何でも利用しようとする日蓮正宗の黒い魂胆がありありと見て取れる。

読んでいて、こんな不快なものは他にないと思ってしまうくらいである。