■池上本門寺30(日蓮の歯を格蔵する本殿・日蓮像)

 

□毎年6月に池上本門寺霊寶殿で公開される、かつて日蓮の歯骨を収蔵していた厨子

 

あまり知られていないことだが、池上本門寺本殿の釈迦如来像といっしょに祀られている日蓮像の胎内には、日蓮の歯が格蔵されている。

池上本門寺大堂の日蓮像の胎内には、日蓮灰骨が格蔵されていることが、大堂の案内板に書いてある。しかし本殿の案内板には、日蓮の歯のことはどこにも書いていないが、池上本門寺刊行「妙玄院日等聖人」という本の中に、千葉県勝浦市の本行寺釈迦殿に、池上本門寺が格蔵していた日蓮歯骨が分骨されたことが載っている。

 

「当山(池上本門寺)祖師堂の完成を半年後に控えた享保83月に、日等聖人は、弟子で後に両山25世に晋む守玄院日顗聖人を、自身の名代として上総国夷隅地方に遣わし、百日に及ぶ勧財を行った。日顗聖人は当山重宝の宗祖御肉牙の一部を奉じて上総に赴き、百日の内の大半を勝浦の本行寺に滞在し、五十日に及ぶ説法を行った。…この時の御肉牙は、日顗聖人の記念碑と共に現在も本行寺に格護されている」(『妙玄院日等聖人』p16)

 

これは間接表現ながら、池上本門寺として日蓮歯骨の存在を文献にて表明している。

この他に、池上本門寺霊寶殿の毎年6月の展示で、かつて日蓮の歯骨を収蔵していた厨子の展示が行われる。これは「かつて」日蓮の歯骨を収蔵していた、というもので、現在は池上本門寺本殿の日蓮像の胎内に収蔵されている。

毎年6月の池上本門寺霊寶殿の展示の中に、江戸時代のもので「四大天王扉絵厨子」というのがある。これはもともと、日蓮御肉牙(歯骨)を格蔵していた厨子で、展示の説明書きには

「もと宗祖(日蓮)御肉牙(歯骨)奉安  今 御肉牙は本殿祖師像内に納骨」

とありました。

展示の厨子の頭部を見ると、宗宝調査会が発行した「宗宝」と書いた貼り紙が貼り付けてありました。この「宗宝」と書いた貼り紙を判読すると

 

「番号 第十六号 品名 御肉牙 ○○ 本門寺 調査日 大正十四年○月二十一日 」

 

とあり、さらに宗宝調査会の委員五人の押印がありました。

つまりこの貼り紙は、宗宝調査会という団体が、池上本門寺の御肉牙を調査して、宗宝として認定した認定証のようなもの。池上本門寺霊寶殿の中の展示は、写真撮影禁止なので、これを写真でお見せできないのは残念である。

霊宝殿1


 

それではこの宗宝調査会という団体とは、一体どういう団体なのか、気になるところ。

そこで池上本門寺霊寶殿の僧侶に質問しました。

 

僧「宗宝調査会とは、日蓮宗の中にある団体で、明治後半のころにつくられ、現在も日蓮宗の中にあります。日蓮宗では、お祖師様(日蓮)に関する重宝を宗宝、それ以外の上人等の重宝を準宗宝といいます。宗宝調査会とは、日蓮宗の高僧、学者で組織され、日蓮宗の各寺院の重宝を調査し、宗宝、準宗宝として認定された重宝を、日蓮宗として登録していくものです。

厨子の頭部に貼ってある『宗宝』と書いた紙は、池上本門寺の御肉牙が、宗宝として登録されている、ということを証するものです」

 

この日蓮宗の宗宝調査会の制度は、文部省や文化庁の調査鑑定ではないにしろ、少なくとも日蓮宗として、学者が大正時代に調査しているということを示すものである。

大堂の日蓮祖師像が国宝保存法により重要文化財として指定を受けたのが昭和初期。この時期は文化財の科学的調査がはじめられた初期の段階であるとはいえ、池上本門寺の日蓮肉牙が、宗宝調査会の調査を経ているということは、特筆すべき事ではないかと思われる。

 

それと、池上本門寺本殿に参拝しても、普段の日は扉が閉じられていることが多い。

フリー百科事典・Wikipediaによれば、池上本門寺本殿の釈迦如来像の胎内には、インドのネルー首相が寄贈した釈迦の舎利骨が納められているという。

本殿の日蓮像の胎内には、日蓮歯骨が収蔵されている、というから、そういう事情から、本殿の扉が普段は閉められていることが多いのかも知れない。

霊宝殿3